好きな日本映画の三本の指のうち、一つに「無宿(やどなし)」(’74年公開)がある。ロベール・アンリコ監督のフランス映画「冒険者たち」(‘67年)が元になっているらしいが、元は見ていない。取り立てて、ケンさんやカツシンや、梶芽衣子さんの熱烈なファンでもない。が、この映画を観ていたら、なんでか、涙が出る。舞台は昭和の12年頃。その頃から生きていたわけではないが、懐かしいのだ。海中の財宝を探すために、主人公たち3人は、ポンポン船みたいな船に乗って、沖合いまで出る。船は、壊れていないというだけで、かろうじて動いているようにしか見えない。映画自体は、もしかしたら仁侠映画に分類されるのかもしれないが、後半、これら、海と浜辺のシーンとなると、それまでの牢屋やら刺青やら博打のドロドロを離れて、極めて根源的なところに訴えかけてくるように思える。それは、意識のある頭にではなくて、体にじわじわ染み込んでいって、その対価として、涙が分泌される感じがある。無論、作品としての技術力、俳優陣の演技力に拠ることは言うまでもない。しかし、私は評論家ではない。映画は、面白いか、面白くないか、二つに一つ。最も好きなシーンは、男二人の友情に割って入れない女一人、寂しいのか諦めたのか、着物を脱いで、裸で海に入り、浅瀬を泳ぎ始める。それに気付いた男二人、女の泳ぎが下手なのを心配したのか、ただそうしたかったのか、海に走って、泳ぐ。言葉は、「おー!」というマスラオ音と、女の笑うタオヤメ音だけ。三人が泳いでいる。体のノスタルジーである。「思い返しの痛み」である。この痛みのあるところ、私の体は、必ず濡れている。そんな、私が動物だった頃が、懐かしい。
ルーマニア料理l@ Marius→
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