カテゴリ
以前の記事
2024年 03月 2023年 10月 2022年 11月 2022年 08月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 11月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2018年 05月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 06月 2017年 05月 2016年 12月 2016年 10月 2016年 08月 2016年 05月 2016年 03月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 09月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 11月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
「あの、飛行機取って。」
飛行機といっても、それは、飛行機の形をしたオルゴールである。 そういえば、しばらくの間、触ることのなかった飛行機。いや、オルゴール。 プロペラのところがゼンマイになっていて、巻けば音楽が流れる。 曲は、「FLY ME TO THE MOON」。門司のオルゴールミュージアムを訪れた友人が、「どの曲がよいか?」と電話を掛けるまでして、買ってきてくれたものである。『「FLY ME TO THE MOON」がいい!』と即答した私を、「趣味がはっきりして良い。」と褒めてもくれた。 何年か前、知的障害のあるT君が、このオルゴールを手に取って、店にいる間中、手離すことはなかった。T君の興じるに任せていると、いつか「ガプッ」と、小さく鈍く軽い音がしたのを最後に、FLY ME TO THE MOONは、止まった。「ごめんなさい。」と平謝りされるお母さんに、こちらの配慮のなさを逆に思い知らされる気がして、心が痛かった。平素から、小さくなって生きておられるのを見ていただけに、いらない恐縮の機会を作ってしまったことが、愚かだったと思われた。こちらも、ただ「ごめんなさい。」と謝るしかなく、もちろんその中には、買ってきてくれた友人への「ごめんなさい」も含まれているのであるが、帰られるまで、何百の「ごめんなさい」が飛び交ったのだろう。反省しきりだった。お母さんともT君とも、変わらぬ付き合いは続いているが、あれ以来、来店をされることはない。たまたま店の近くでT君に会った時、「てっちゃんかあさん、てっちゃんかあさん。てっちゃんおみせ、あっち?てっちゃんおみせいこ。てっちゃんおみせいこ。」と言ってくれた。少なくとも、T君は喜んでくれていたのだ。それを思うと、ちょっとぽろっときた。 それ以来、飛行機は、棚の上の、手の届かない位置へ、飾られることとなった。 詳しくは語らずとも、「ゼンマイは、ゆっくり廻してみて。」と息子には前置きしたが、果たして、音は出るのだろうか。 巻き切ってはみたが、反応なし。 久しぶりに棚から下ろしてきたものの、まるで、腫れ物触るようにして、息子にゼンマイを巻かせたのである。私の痴愚を知るこの飛行機を放置してきたのだ、不如意の結果は当然至極である。 「やっぱりだめかあ。」 そこへ主人が手を出した。叩いたり、逆さにしたり、指で弾いたり、それこそ、手当てらしきものが始まったのである。確かに、引っかかることなく、ゼンマイは巻けるのである。シリンダーと切断されていることを断定してしまうには早急すぎる。埃をかぶり過ぎたか、油が減ったか、分解はできない仕組みなので、外側から、ふっふっーと、息を吹きかける。まるで人工呼吸である。息子も参戦してきて、二人掛かりの救急救命処置だ。 「、、、ラ、、、」 音が出た。しかし、音は続かない。さらに手当てを続ける。心臓は止まっていなかったのだ。数年間、心室細動の末期を続けていたのだ。 「ごめんねー!」 AEDをガチャッと開けて、電気ショックを与える要領で、オルゴールに叫ぶ。 「、、、イ、、、」 諦めない!ふっーふっー!人工呼吸に戻る。ふたたび、AED。三人掛かりの手当ては続く。 「、、、ミ、、、」 だんだん手応えらしきものを感じてきた。 「、、、ト、、ゥ、、、ザム、、、ン、、ア、、、ン、、、、、、、ド」 なまなかのことではなかったが、オルゴールは息を吹き返した。少々手荒なことをしてしまったので、この辺で、平らなところに置いてあげた。 「ところで、ふらいみーとぅざむーんって、どんな歌?」 おのづからJulie Londonという人のFLY ME TO THE MOONを三人で聴いてみた。 そのうち、それぞれは持ち場に戻り、やるべきことをやる時間になった。 飛行機からは、なめらかに、FLY ME TO THE MOONが流れ出した。喜んで遊んでいたT君の顔が浮かんできた。許してくれとは言わないけれど。 当の、この飛行機を贈ってくれた友人は、しばらく来店されていない。 店をやっていくことは、どこまでいっても、人を想うことのほかには、ないのかもしれない。 ♪、、、In other words, I love you、、、♪
by misa_flamenca
| 2012-08-22 20:02
|
ファン申請 |
||